朝ドラ「エール」で「環のパリの物語 前編」(第59回)で、柴咲コウさん演じる歌手・双浦 環(ふたうら たまき)が若き日にパリに留学し、金子ノブアキさん演じる若手画家・今村嗣人(いまむらつぐひと)に出会い恋に落ちるというストーリーが放送されました。そこで今村嗣人のモデルになった画家・藤田嗣治(ふじたつぐはる)についてザックリまとめてみました。
◆今村嗣人(金子ノブアキ)
画像引用元:https://www.nhk.or.jp/yell/cast/tsuguhito.html
パリ在住の若手画家。パリの展覧会サロン・ドートンヌに入選し将来を嘱望されている。パーティーで環と出会い恋人になる。
ちなみに金子ノブアキさんはロックバンドRIZEのドラマーで俳優としても活躍しています。現在は大河ドラマ「麒麟がくる」で織田信長の家老・佐久間信盛を演じています。
【ネタバレ注意】藤田嗣治について知ってしまうとドラマのネタバレになってしまうかもしれませんのご注意ください!
◆今村嗣人のモデル 画家・藤田嗣治とはどんな人?
画像引用元:藤田嗣治 - Wikipedia
金子ノブアキさん演じる今村嗣人(いまむらつぐひと)のモデルになった藤田嗣治(ふじたつぐはる)は1886年11月27日生まれ。東京府牛込区(現在の東京都新宿区)出身の画家です。陸軍の軍医の家に生まれ、幼い頃から絵を描き始め、高等師範附属中学学卒業後の1905年に父の上司だった森鷗外の勧めで東京美術学校(東京藝術大学美術学部)西洋画科に入学し、1910年に卒業します。翌年、美術教師だったとみと結婚し、新宿百人町にアトリエを構えますが2年で離婚し、1913年にフランスに渡りました。
パリで売れっ子画家に
フランスではパリのモンパルナスに住んでモジリアーニやピカソなどの画家たちと交流し、自分の画風の確立を模索しました。しかし渡仏の翌年には第一次世界大戦が勃発し実家からの送金が滞るようになり生活は困窮しましたが、徐々に絵が売れるようになり、個展を開催すると高い評価を得て、絵が高値で売れるようになりました。面相筆を使った墨で細い輪郭線を描くスタイルを確立した藤田の描く裸婦像は「乳白色の肌」と呼ばれて絶賛され、1919年には新進気鋭の芸術家に光を当てるパリの展覧会サロン・ドートンヌに出品した油絵がすべて入選。1925年にはフランス政府からレジオン・ドヌール勲章を受章しています。ちなみに藤田嗣治はパリ、そして南米での生活で3度結婚し、3度離婚をしています。
代表作の「ジュイ布のある裸婦」。独特の半透明な質感の“乳白色”が、画面全体を透し彫りするようにして、裸婦の体表と、まわりの空間(ジュイ布)とを連続化している手法。 pic.twitter.com/4rDa9N2569
— キヒツ (@kihitsu_2013) 2018年8月26日
日本に帰国、そして日本との決別
藤田嗣治は1933年からは日本を拠点に活動をはじめます。1936年には妻・君代と5度目の結婚をし、1938年からは従軍画家として1年間、日中戦争中の中国に渡り、大作「アッツ島玉砕」などの戦争画を制作しました。そのため戦後は画壇から戦争協力者として批判を浴びることになります。そうした批判に嫌気がさした藤田は、失意のうちに日本を離れパリに戻りました。1955年にはフランス国籍を取得し、1959年にはカトリックの洗礼を受け、レオナール・フジタとなりました。1968年1月、スイスのチューリッヒにてガンのため死去。享年81才でした。
アッツ島玉砕 https://t.co/jyq4VRRKZ1 @musey_jpより
— PsycheRadio (@marxindo) 2020年6月17日
◆藤田嗣治と三浦環の関係は?
画像引用元:https://www.nhk.or.jp/yell/story/week_12.html
柴咲コウさん演じる双浦環のモデルとなった三浦環は、1913年に医師の三浦政太郎と結婚し、翌年から夫とともににドイツに留学しています。しかし、第一次世界大戦が勃発し、戦火を逃れてイギリス・ロンドンに移住します。そこでイギリスの有名な指揮者、サー・ヘンリー・ウッドに認められ、翌年にロンドンの名門ロイヤル・オペラ・ハウスでオペラ『蝶々夫人』に主演して大絶賛を集めました。
画像引用元:https://www.nhk.or.jp/yell/story/week_12.html
藤田嗣治と三浦環は同時期にヨーロッパで留学生活を送っていますが、ドイツ・イギリスからアメリカに渡った環と、フランスで暮らす藤田の2人に接点はないようです。そして、「環のパリの物語 前編」(第59回)で描かれた「双浦環がイタリアでの『蝶々夫人』のオーディョンに押しかけて受けて、プッチーニに認められて世界的なプリマドンナになる」という話も創作のようです。
※追記
「エール」6月19日放送「環のパリの物語 後編」(第60回)で、環はイタリアでのオーディションの2次で落ちてしまいますが、舞台を企画するアダムの推薦でロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスでのオペラ『蝶々夫人』のオーディションを受けて合格し、世界的なプリマドンナになるというストーリーが放送されました。ロンドンで『蝶々夫人』を演じて絶賛され、世界的なプリマドンナになるという三浦環のエピソードに落ち着きましたが、プッチーニとのエピソードが創作でもう少し描かれてもよかったのかなという気がします。もしかしたら描いていてカットされたのかもしれません。
柴咲コウさん演じる双浦環のモデル・三浦環について興味を持たれた方はこちらもチェックしてみてください!
絵画の批評家・ピエール役にフローラン・ダバディさんが出演されました!
— 連続テレビ小説「エール」 (@asadora_nhk) 2020年6月19日
カフェの店主のフィリップ役、ピーター・フランクルさんと前室にて📷✨#朝ドラエール#フローラン・ダバディ#ピーター・フランクル#3月中旬に撮影 pic.twitter.com/qUJae9vUNF
【最後に…】
朝ドラ「エール」第12週はスピンオフですが、ドラマの本線のストーリーでは描かれない登場人物の背景やエピソードを知ることによって、キャラクターが浮き彫りになり、これまでのセリフのひとつひとつがより深いモノになったように感じました。
特に「環のパリの物語」で、同時期に世界で活躍した日本人やフランス菓子・タルトタタン誕生のエピソードを織り交ぜてドラマを紡ぎ出す吉田照幸さんの手腕はすばらしいと思います。収録の中断による6月下旬からの「エール」再放送はスピンオフを踏まえて見直してみるともっと楽しめるかもしれません。
コロナ禍で中断されていたドラマの収録も6月16日から再開されたとのニュースも報じられています。これからの朝ドラ「エール」の展開も楽しみですね!